臨床心理士 阿部真里子の気まぐれ道草NAVI

所長阿部が折りにふれて感じたこと、考えたことをちょっとした言葉にしてみようと思いつきました。 人生でNAVIが必要だな・・・どうやって生きて行ったらいいの?って思うこともありますが、あんまりがむしゃらに突っ走るばかりでなく、時々ほっと一息ついたり、遠回りになるけれど道草も大事ですよね。道草の途中で、意義深いものや自然に出会ったり、人に出会ったりして、人生が大きく変わることもあるのかも。"カウンセリング"も道草の一つかもしれません。目的地にとらわれない道草的NAVIって面白くありませんか?

第78回(2009.5.13)「スラムドッグミリオネアー」見ました!!

皆さん、急に暑くなって、まるで、もう真夏のような感じですね。どんな洋服を着ていいか、わからなくなりますね。

 アカデミー賞の「おくりびと」も先日遅ればせながら見て感動しましたが、今回はスラムドッグミリオネアーを見て、とても気持ちが揺り動かされました。

 クイズ・ミリオネアーは日本でも放映されていますが世界各国で放映されているクイズ番組だそうで、最初は題名を見た時に、「面白いのかな・・・」と半信半疑でした。ところが、映画が始まると、どんどん映画の内容に引き込まれていきます。主人公の青年は貧しい地域、インドのスラムに生まれて、大変な人生を生きていくのですが、その途中で出会った出来事に、クイズの答えが隠されているのです。青年が自分の人生を回想していくと、そのクイズの答えがどうして、その青年にはわかったのかということが描写されていきます。悲しかったり、辛かったりする衝撃的な、凄惨な出来事の中で、クイズの答えがわかるので、見ているこちらも、悲しく感じたりするところがあります。

最後は一応、主人公の青年にとって「ハッピーエンド」(?)とも言っていいもので、それはそれで良いのですが、そうそう素直に喜べるというものでもないような複雑な気持ちで、映画館を後にしました。でも、この映画自体はお薦めです!(☆☆☆☆☆星5つ。) 映画の最後のエンドロールが出る前に、インド映画につきものの、出演者が総出で音楽に合わせてダンスを踊ります。これがあると、なんとなく、今までの辛く悲しい気分にさせられる映像は「作り物」(フィクション)だったんだなと気持ちの切り替えができて、とてもいいです。「タイタニック」の最後で出演者が役の上で死んだ人も総出で、ドレスやタキシードを着て出てくるのを思い出しました。

カウンセリングでも、面接室の中は別世界(異次元)に感じられることがよくあります。いろいろな話やイメージの中で一定時間を過ごしていると、現実から遊離した気持ちにカウンセラーもクライエントさんもなることがあるので、現実生活に戻るための、最後の手続きは必ず必要となります。ここまではカウンセリング、ここからは現実生活とけじめをつけます。最後にカレンダーを見ながら次回の予約日時を決めたり、料金のやりとりをして、玄関で挨拶してドアを開けて帰るということが、いつも私にはとても大事な意味があるように思います。

あと、カウンセリングではクライエントさんばかりでなく、カウンセラーも癒されることがあるなと、いつも感謝の気持ちで、クライエントさんを見送ってお辞儀をしています。

最近唯一の休みだった月曜日にも、オフィスに出て仕事していたら、休みがなくなり、ストレスがものすごくたまり、ある日、すごく疲れてしまっていたのですが、クライエントさんと話していると、うそのように、だんだんと自分が元気になってくることがありました。事務の人に阿部の顔がカウンセリング開始前よりも、元気になったのを指摘されて自分でも驚いたことがありました。仕事をすることでかえって、元気になるなんて、不思議な仕事です。そんなときに、カウンセリングは一方的なものでなくて、カウンセラーとクライエントさんの相互作用なんだなと、いつも思います。うまくいっているカウンセリングでは特に、1+1が2でなく、3になるような。すごい化学反応のようなことが生じることがあり、それが驚きでもあり、楽しいから、この仕事を続けているのだと思います。私はユング派じゃないのですが、すごい「偶然の一致」のような不思議なことが起こるようなこともよく経験しています。

クライエントさん方との深い、深い絆を感じながら、人生を歩んでいくカウンセラーという仕事は荷の重い部分もありますが、楽しい面もたくさん、あります。私の高校時代の愛読書、サマセット・モームの「人間の絆」という本がありますが、「人の人生はペルシャ絨毯のようなもの」と、クロンショーという登場人物に作者が言わせており、高校2年生の私はとても感動したことを思い出します。一つ一つの模様が違い、一つとして同じような模様がないのが、ペルシャ絨毯で、我々の人生も、そのように、いろいろなつらいことや困難が織り込まれた人生は一人一人違う、貴重な物なのだと言いたいのだろうと思いました。50歳を過ぎた今、また、「人間の絆」を再読してみたいなと思っています。皆さんもお暇なときに、読んでみてもらえませんか?一緒にそんな話もカウンセリングの中で皆さんと語り合いたいです。