エルビス・プレスリーは子どもの頃、きらびやかな衣装で歌う姿を映像で見た記憶がありますが、それもおぼろげで良く覚えていませんでした。曲はどこかで聞いたことのあるものばかりで、何だか懐かしい感じがします。大学時代、エルビスの訃報を聞き、高校時代の友人が「エルビス・プレスリーはドーナッツ病だったんだって。ドーナッツの食べ過ぎで。太ったらしいよ」というのをずっと信用して、肥満のせいで病気になり、亡くなったと思っていましたが、映画を見て死の真相がわかったような気がします。
この映画を見て、エルビスが育った時代がまだまだ黒人の差別が酷くて、たいへんな時代だったんだなと思いました。自由と民主主義を重んじるアメリカでも、保守的で、女性がエルビスの歌を聞いて、興奮して叫ぶことも許されないような保守的な雰囲気が描かれていました。今とはだいぶ違うと思いました。ロックを普通にあたりまえに、今は楽しんでいますが、黒人の音楽と白人の音楽を融合させてはダメ、分けないといけないという考えがあって、エルビスはそこを壊して、新しい音楽を生み出して、それが現代の音楽に繋がっていることが映画を通してよくわかりました。
主演のオースティン・バトラーが2年間もエルビスの音楽を特訓で練習したというのも見どころでした。素晴らしかった。また、トム・ハンクスの扮する「パーカー大佐」が、エルビスの稼いだお金の50%を自分のものにして、かけ事につぎ込んでいる様子なども、よく描かれていました。エルビスが有名になるためには、この大佐の力はどうしても必要なものだったとは思いますが、海外に演奏旅行にも行きたかったエルビスをラスベガスのショーにくぎ付けにして、自由を奪い、食い物にしてしまったのは残念でしたね。一度は反抗して「大佐」と距離を置いても、やはりエルビスには「大佐」が必要な存在だったようで、また、元のさやに戻り、仕事のストレスから、結果として、死期を早めてしまったのかもしれません。
「クイーン」のフレディ・マーキュリーを描いた「ボヘミアンラプソディー」も大好きな映画ですが、このエルビスも再度、見に行きたいと思うくらい良い映画だと思いました。